📍 昌明寺遺跡とは?
昌明寺遺跡は、宮崎県えびの市昌明寺にある、古代から中世にかけて営まれた集落跡を含む複合遺跡です。1997〜1999年の3期にわたる発掘調査で、驚くほど多彩な遺構と遺物が明らかになりました。
🌄 場所と規模
- 標高約220mの河岸段丘上に位置し、古の主要街道「八丘越え」に隣接していた立地。
- 調査範囲は広く、約1.3ヘクタールから延べ1.2万㎡規模に及びます。
🧱 主な発見:遺構と遺物の全貌
遺構(構造物や地形の跡)
- 掘立柱建物跡、井戸、溝、昔の道(木道)跡、座棺墓、馬墓など、集落の骨格となる構造が多数発見されています。
- 古代の堰跡や旧河道も検出され、集落と水利との関係が浮かび上がります。
遺物(出土品)
- 平安〜鎌倉時代の墨書土器(「石」「用」など文字入りの土器)や、越州窯系青磁を含む輸入陶磁器、白磁・青磁・青白磁など620点以上。
- 鉄器鋳造の痕跡を留める鋳型や石塔(五輪塔・宝篋印塔の破片)、奈良火鉢系の瓦質土器など、幅広い時代と文化を反映する品々が出ています。
これらから、昌明寺地域は寺院だけでなく、役所や鍛冶場を含む大規模集落だった可能性が示唆されています。
🕰 歴史の重層を感じる場所
- 遺跡の中心部は、かつてこの地に存在した曹洞宗寺院「昌明寺」の寺域と重なります。
- 発掘された瓦質土器や石塔の破片には、中世の火災の痕跡が見られ、寺が幾度か焼失した可能性があります。
- 弥生・古墳時代から近世に至るまで、住宅・農業・製鉄・宗教・行政など、多彩な営みの連続性が感じられる場所です。
🕰 昌明寺遺跡の歴史年表
▶ 弥生時代〜古墳時代
- 初期段階は詳細不明ながら、弥生〜古墳時代の土器や刻み込まれた木器などが発見されており、古くから人が暮らしていた形跡があります。
▶ 平安時代(9〜11世紀頃)
- 掘立柱建物跡、井戸、溝、木道、土坑など集落の構造が確認され、墨書土器(「石」「用」と書かれたもの)も出土しています。
- また、越州窯系青磁や白磁、青白磁などの輸入陶磁器や国内製陶器が600点以上出土し、当時としては卓越した交易・文化的なネットワークがあったと考えられます。
▶ 鎌倉・中世期(12世紀〜16世紀)
- 鋳型、鉄滓、銅片など、鍛冶や鉄器製造に関する痕跡が認められ、鍛冶工房の存在や産業的な機能を伴った集落可能性が示されています。
- 瓦質土器や石塔片(五輪塔・宝篋印塔の破片)が発掘されており、中世の寺院「昌明寺」の存在が明らかになります。
▶ 16〜18世紀(中世後期〜近世前期)
- 出土遺物に被熱・焼失の痕跡があることから、「昌明寺」は数回にわたり火災に見舞われた可能性があります。また、瓦質土器の年代から16〜18世紀頃まで寺院が存続していたと推定されます。
- この時期の出土品には、白磁・青磁などの輸入陶磁器や奈良火鉢、国産陶器および墨書土器などが含まれ、文化的多様性と高い集落機能が継続していたことが伺えます。
▶ 近世中頃〜江戸末期
- 遺物の最終期は江戸末期あるいは近世中期まで遺跡利用の痕跡が続きますが、寺域や建物遺構は削平されており、本格的な建物跡は残されていません。
- ただし、瓦質土器や石塔の破片には火災痕が認められ、耕作地化された遺跡層においても、中世から継続的な営為があったと推察されます。
▶ 1990年代〜発掘調査
- 1990年(平成2年)のボーリング調査により、埋蔵文化財の存在が確認され試掘砂調査が実施されました。
- 1997年〜1999年(平成9〜11年)、県営圃場整備事業に伴う大規模調査が3回にわたり実施され、広域(約1.2万㎡、1.3ヘクタール規模)において、立柱建物跡、溝、掘立柱、土壌墓、旧河道、堰跡など多数の遺構が確認されました。
- 同時に、弥生から近世に至る遺物数万点が出土し、多様な時代層と機能を持つ複合遺跡であることが確証されました。
🧭 年代別まとめ(時系列)
時期 | 主な内容 |
---|---|
弥生〜古墳時代 | 土器や木器等の使用による布居の初期段階 |
平安時代 | 墨書土器や掘立柱建物跡、輸入陶磁器多数 → 交易集落としての性格 |
鎌倉・中世 | 鍛冶工房・製鉄・寺院昌明寺の存在 → 農・行政・宗教の中心的役割を担った大規模集落 |
16〜18世紀 | 火災痕のある石塔片や瓦質土器 → 昌明寺寺院の存続と変遷 |
近世中頃〜末期 | 寺域の削平と農地化、遺構の消失後も文化的痕跡が遺る |
1990年代〜調査 | 発掘による構造・出土物の多様性確認、大規模集落と複合機能の証明 |
昌明寺遺跡は、古代から中世・近世にかけて、政治・宗教・工業・生活を担う集落機能をそなえた複合的な場であり、その歴史的価値は非常に高いといえます。発掘調査を通じて、地域の歴史層を時代ごとに垣間見ることができます。
🧭 遺跡を巡る旅のガイドライン
- 棚田風景や田の神像など、地域の民俗・自然とともに遺跡を歩くことで、時間を超えた文化の息吹に触れられます。
- 現地には解説看板や案内板は少ないので、事前に資料やガイドを準備すると訪問がより楽しめます。
♨ 遺跡訪問後の癒し:昌明寺温泉リトリートVilla
◆ 古代と現代が融合するステイ
遺跡見学後は、徒歩または車でほど近い吉田温泉郷にある、一棟貸しの昌明寺温泉リトリートVillaへ。こちらは2025年にリニューアルオープンした、源泉かけ流し100%・炭酸泉(36〜38℃)と3種類のサウナ完備のリトリート施設です。
◆ 遺跡の余韻を温泉で受け止める
- 古代から中世の営みと土の気配を感じたあとは、炭酸泉とミネラル豊富な源泉で心身を深く癒します。
- サウナ(ドライ・ミスト・遠赤外線)は、古の文化と対比しながら、自分流の「ととのい」を選ぶ快適空間です。
✍ まとめ:歴史と癒しをつなぐえびの旅
昌明寺遺跡は、約1,200年にわたる歴史と文化が眠る「生活史の舞台」。そこで湧き出す温泉は、悠久の時を経て、今も生命の湯として地域を包みます。
- 🏺 古代・中世の集落跡を歩き、
- 🧂 柔らかな炭酸泉とヒーリングサウナで癒される。
歴史と現在が響き合う旅を、えびの市・吉田温泉郷とともに満喫してください。